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ホルムは夏日のおまけのおまけ

/メロマナの深夜



 夜、熱を帯びた白い体は、いつもより従順に彼の欲望に応じた。
 俺は試しているのだろうかと思う。

 窓の鎧戸の隙間から、一筋の月明かりが差し込んでいる。
 月光は寝台の上に座った彼の腿と膝をまっすぐに横切り、少女のほっそりとした腰を照らし、乱れたシーツの間で薄闇に溶けて消えていた。
 メロダークは両目を閉じて浅く呼吸をするマナの胴を優しく撫でながら、空いた方の手を窓辺の杯へと伸ばした。就寝前に厨房からわけてもらったいくつかの氷はこの熱気の中にまだ形を残しており、メロダークの指がその氷片のひとつをつかみ出す際、ぶつかりあって涼し気な音を立てた。
「熱くなりすぎているな」
 マナが目を動かし、彼の方を見た。彼に対する無防備な信頼と夜のことに関するいくばくかの不安が入り交じったやけに幼い表情で、頭の芯が痺れるような気がする。
 のしかかると、少女の腕が首筋にすがりつく。メロダークさん、と小さな声でささやいたマナが、次の瞬間、「ひっ!」と声をあげ、彼の肩に爪を立てた。杯からつかみとった氷の破片を、メロダークは、敏感になりきった少女の陰核に押し当てていた。
「少し冷やした方がいい」
「あッ――!」
 メロダークが指を動かした瞬間、マナの両膝がばね仕掛けの人形のように跳ね上がり、彼を思い切り蹴った。鈍い痛みがずしりと腰の奥に響き、彼をひどく興奮させた。
「暴れるな」
 穏やかな声でそう叱り、寝台の上で弾む少女の体を膝で挟み込む。氷をぐりぐりと押しつけると、マナの背が仰け反った。少女の両手首をひとまとめにして片手で押さえつける。
「あ、あっ……ンふーっ……メロダークさ――駄目、駄目っ……やだあああっ!」
 半透明に濁った氷の破片の向こうで、色味を失った快楽の芽が、空気を求めるようにゆっくりとひくつく様子を、メロダークはじっと見つめていた。体の他の部分と同じように、性器も色味が薄い。氷塊を軽く前後に滑らせながら小指の先で花弁を押し広げれば、襞なす内側は潤い、新たなぬめりを帯び始めていた。こんな小さな肉の突起が、羞恥心と自制心の強い彼の少女に我慢できないほどの強い快感を与えることに、いつもながら不思議な気持ちになる。そこでふと半ば勃起した己の性器が意識され、俺も変わらんか、と真面目な顔のままで思った。挿入して、しっかりと抱きしめ髪を撫でキスをし、もう大丈夫だ怖いことをして悪かったと少女をあやしてやりたくなったが、我慢する。
 氷を滑らせ、膣の中へ氷を押し込んだ。その場所に彼の肉体以外を受け入れたことのない少女は、引き攣るような悲鳴をあげた。
「メロダークさん……メロダークさん!」
「どうした?」


 杯の中にはまだ氷の破片がいくつか残っている。
 三つ、四つ目と次々押し込み、五つ目は彼の指先で溶けた。ほっそりとした腰が、高く浮かび上がった。卵を産むように、つるりと氷が零れ落ちる。それを拾い上げてもう一度中に押しこみ、「行儀が悪いぞ」とささやいた。指で花弁を挟み込み、ぴったりと閉ざしやる。
 突然、生温い水が彼の手にかかった。ちらりとマナの顔を見たが、泣きだした少女は、自分が潮を噴いていることに気づいていないようだった。


「メロダークさん……怖いの……やめ……や……!」
 泣きながら彼の首筋にすがってくる。
「お腹の中で、ぶつかっ……んっ……あ……奥まで、入って……やだ……いや!」
「――声をあげると……」
 背中に爪が食い込む感触にうっとりとしながら、メロダークは、左手の指の付け根を少女の唇に押し当てた。
「聞こえるぞ。他の部屋に」
 噛んで悲鳴をこらえろ、そういうつもりだったのだが、マナは、は、と息を止め、真っ赤になった顔を彼の首筋にいよいよ強く押し当ててきた。
 悲鳴の変わりに、涙がこぼれた。
 メロダークは優しく、首筋や乳首の周囲や、マナが快感を示す場所を唇で愛撫していった。
「愛している」
 そう言われると、少女の快感がひどく増すことを知っており、耳元で囁いてやると果たしてマナの全身が震えた。声を出さぬように、氷の感触をこらえ、快感を昂らせて――恋人が吐息まで染める様子は男を楽しませた。
「……んんーっ……うっ……んっ……」
「どこに入っているんだ?」
「……メ、ロダークさっ……」
「マナのどこに氷が?」
 隠語を言わせたかったのだが、マナはなかなか口をひらかなかった。
「はっ……う……」
 強情な恋人の下腹に申し訳程度に生えた、猫の毛のような白い茂みの下あたりを揃えた指先でぎゅっと押してやる。薄い皮膚と肉の下で、ごろごろと氷がぶつかり合いながら移動する気配があった。マナがのけぞって、はっ、と強く息を吐いた。見開かれた両目の、まつ毛が震えている。
「マナ?」
「がっ……か……体の奥に……」
「どこだ?」
 さらに奥へ行くよう、ぐりぐりと指で押さえると、マナの両膝が震えた。
「……んっ……く……赤ちゃん、の……ところ」
 散々恥じらった末に出てきたその言葉に、メロダークは苦笑した。
「マナの、赤ちゃんのところ、か」
「冷たい……あっ……あ」
「……温めてやるか?」
 いい、とも、いや、とも返事を待たず、男の厚みのある硬い手は、マナのなめらかな下腹を、半円を描くようにさすった。内側で溶け出した氷の塊はその動きに合わせて、互いを押し合いながら、滑り、ぶつかりあい、内壁で激しく暴れた。冷たい水が少女の体からにじむ熱い液と混ざりあい、滴り落ちて男の太股をびしゃびしゃに濡らした。経験したことのない異物感と恐怖と快感に激しく泣きじゃくる少女をなだめるどころか煽るように、男の手が乳房や下腹の敏感なところを撫で、さすり、つねる。冷え切った蜜壷から感覚が消えたころ、メロダークはようやく、マナの手首を解放した。少女の腰をつかまえて、子供のように泣きじゃくる少女の顔を見つめながら、ゆっくりと挿入した。

 マナの膝の裏を押して腿を広げさせ、一度押し出された亀頭を再度押し込んで動きを止め、「……きつすぎるな」とつぶやいた。少女の内側はこれまでにないほど脈うち、彼の熱を誘っている。泣き続けるマナの耳に自分の声が届いていないのを見届けると、微笑して、「だが、いい」とささやき、腰を勢いよく進め、背を仰け反らした少女の絶叫を引き出した。
「あっ……熱い……熱いの……」
「……おまえのここが……冷えているから……」
「い……いじめないで」
「かわいがってやっているだけだ。これは全部水か?」
 マナが体を捻りながら彼を見上げて、抱きついてきた。泣きじゃくる少女を抱き返すと、体温がまた上がったのを感じる。彼から逃げ出そうとする小さな尻を両手で抑えつける。

 試しているわけではないと思う。
 ただ愛しているだけだ。
「まったく、暑くてかなわんな」
 彼が低い声で囁くと、彼の巫女は熱い息の塊を吐いて、メロダークさん、とささやいた。


end

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