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溶けていく 29


「もしもお前が命を賭けて守ったこの町や、お前を英雄と仰ぐ人々や信者や、神殿の助けを待つ病人や孤児や老人や貧者や、育ての親のアダ殿や、親しい友人であり共に戦った仲間たちや、お前が名付けた竜の子や、そういった人とのつながりや絆だけでなく、この古く美しい石造りの神殿、暖かな炉と軒、北に広がる森と南の大河、村々と麦の揺れる丘、得難い故郷だけでなく、巫女としての務めと誇り、お前を支え続けタイタスを滅ぼす力を与えたアークフィア女神への信仰、自らつかみ取った運命の糸で織りあげた、美しい織物のようなお前のこれまでの人生、この先に巫女としてのお前を必要とする何もかも、そのすべてを捨てて、ただの女として俺と一緒に神殿を出てくれと頼むなら」



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