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溶けていく 13

 その部分に触れ、ぴたりと張り付き、表面の形を確認するように撫でさすっていた大きな掌が、薄い茂みに指を差し込んで手触りをただ楽しむようにそこでしばらく遊び、また後ろへ下がる。
 花弁を指先が押し開くと、ひんやりとした外気を感じた。たったそれだけの刺激で、かすかに湿りを帯びた内壁は、ひくりと強く震えた。
 月が満ちるごとに苦痛と違和感をもたらし、微かに嫌悪し、普段は意識の外に追い出していたその場所が、とても柔らかく敏感なことに初めて気づき、ここから先が怖くてたまらなくなる。武具と防具で身を固め、争い、撃ちあった探索の記憶が蘇ってきて、手にした剣で人を叩き斬った瞬間のあの荒々しい、獣めいた、否定しようのない高揚感、血と肉の重い感触が呼び覚ます肉の喜びと、すべてが済んだあとのぐんにゃりした死体を前にした荒廃した虚しさと、どうしようもない悔悟、そういった諸々が内臓へとつながっていく部分への刺激に呼び覚まされて混ざり合う。
 肉と血で出来た体なのだ、自分も、だからこんなにも痛い、苦しい。マナの腹と胸が大きく波打った。
 少女の恐怖を感じ取ったかのように、メロダークの指の動きも慎重になった。火が噴くように熱くなった顔をじっと見つめられているのに気づいて、マナは慌てて顔を背け、シーツに頬を押し付けた。
 メロダークの指が体の中に入ってくる。
 いつのまにか目をつぶり歯を食いしばっている。
 耳の奥に、どくんどくんと、発熱した時のような騒々しい脈の音が響き渡る。
 触れられている間のたじろぎは今までの愛撫と比べ物にならない。ぴったりと閉ざされた肉の襞をなす隙間に、硬い指が探るように動くと、異物が体内に入り込む圧迫感と、粘膜が乾いた物に擦れる痛みで臍のあたりまでがむず痒く震え、それなのに貼りつくように薄い皮膜が張った表面を指が這っていったあとは、すぐにまた同じ場所に触れて欲しくなる。
 花弁がいたずらに左右に引かれ、ぱくりとそこが開いた。入り口をまさぐっていた指が、今度は奥へと捻りこまれていく。マナの意志を無視して、少女の体が男の指を押し出そうとする。
「マナ」
 返事をせずにいると、また名前を呼ばれ、「はい」と小さな声で答えた。
「力を抜いてみろ」
「はい。あの、も、もっとゆっくり……」
 いつの間にか全身が緊張し、腰が宙に浮いており、言われた通りに呼吸しながら筋肉を緩めるが、指が動きだすとまた下腹に力がこもってしまう。マナが要求したとおり、ゆっくりと内壁を擦り、そのせいでかえって息すら苦しくなる。
 付け根までが捩じ込まれた指が隙間をこじ開けるように中でぐりぐりと動いて、
「……う……ああ、あっ……やだ……や……」
 切り裂かれるような痛みに汗を滲ませ声をあげると、次の瞬間指が一気に引きぬかれ、その刺激に、は、と息が漏れた。メロダークが重ねていた体をずらして寝台に横たわり、マナを抱き寄せた。両方の掌が痺れる尻に回り、小ぶりな半球を包み込んだ。他の部分と同じように少女のそこもまた肉づきが薄く、他の女のように『ちゃんとした体』でない気がして、申し訳なくて身がすくむ。
「無理か?」
 男の声に気遣いが滲んでおり、マナはぶんぶんと首を横にふった。
「ううん、無理じゃないです。大丈夫。ちょっとだけ……い……痛いけど、本当は我慢できるんです。声が勝手に……大丈夫。だから……き……嫌わないで」
「なぜそんなことを言うのだ」
 メロダークは驚いたようだった。
「だって……こ、怖くて」
「意味がわからんぞ」
 なだめるようにぽんぽんと背を叩いたあと、メロダークが「嫌わない」と穏やかな声で言った。
「大丈夫だ。嫌わない」
 臆病な心よりも体の方が敏感に反応して、息が漏れ、がちがちに強ばっていた背や尻からようやく力が抜けた。ぴったりと体を寄せた肌の温かさに、先程までの恐怖や混乱はなく、今はただ安堵する。
 男の手をとって自分の下腹に導いた。足をそろそろと開き、その部分にぎゅっと押し付ける。
「触ってください」
 小さな声でうながすと、メロダークが頷いた。
 息をしながら、男の指を受け入れ、今度は目を閉じずに男の背中に指を這わせる。
 左の肩甲骨の下に一箇所、小さな円形の膨らみがあり、その部分だけ皮膚が薄い。
「この傷、探索の間に?」ときいた。
「どうだろうな」
 きっとそうだと思い、治癒術をかける時のように、そこに掌を押し当てた。古い傷は魔法でも癒せない。傷ついた瞬間にきっとその場にいたはずなのに、どうして私はきちんと見ていなかったのかなと思う。あんなにたくさん助けて頂いたのに。自分の痛みではなく掌に意識を集中して、他の傷を探し、硬い背中の隅々まで手を滑らせていく。少女のぎこちない愛撫に呼応するように指を動かし続けていたメロダークの親指が秘裂の上部に滑り、ある柔らかな一点で止まり、そこを圧迫した。下腹の奥に波打つような衝撃があり、喉の奥に空気の塊が膨れあがった。
「そこ、あっ……」
 声をあげかけたが、さらに強く押されて息が止まる。点を中心に、熱い泥のような鈍い痛みが体の中と外にじんわりと広がった。
「動いてみろ」と囁かれる。
「えっ――え?」
「お前がいいように……痛みがないように」
 意味がわからずメロダークの顔を凝視するが、男は至って真面目だ。目が先程よりも光っており、いつもの無表情な仮面の下で激しい情欲が溢れていて、その熱に当てられたようにマナの息も震えた。自分でもそれとわかるほど震える尻を持ち上げ、言われた通りにしようとするが、体が硬直する。
「あ……で、できない……」
「マナ」
 強くうながされて、びくりとなる。
「だってもう……今、もう、痛い……痛くて、怖いです」
 メロダークが、ああ、と少し驚いたようにつぶやいて指を離し、身を起こした。解放されたマナは大きく息を吐き、汗に濡れた体をぐったりとシーツに沈めた。心臓が早鐘のようになっている。一瞬、眠りに落ちるように両目を閉じたが、すぐに肘をついて上体を起こした。
「メロダークさん?」
 不安の滲む声で呼びかける。寝台から滑り下り、床に膝をついた男が少女の足首をつかんだ。そのまま勢いよく斜めに引っ張られて、抵抗する暇もなく、あられもない格好を男の眼前に晒している。
「駄目、見ないで!」
 少女の片方の足を抱えたメロダークは、マナの悲鳴を無視して、股間に顔を埋めていった。



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