両脚を閉じようとすれば間にある男の頭を腿で挟みこむことになり、暴れれば持ち上がった尻を痛いくらいにつかまれ、やめてと頼んでもきいてもらえず、羞恥のあまり泣きだしたマナの嗚咽にあわせてひくつく下腹を、なだめるように掌が撫でる。
「汚いの」
そう囁けば、「そうだな」としゃがれた声が返ってきた。
両脚の間に覗く男の黒い髪がかすかに動いているのを、マナは泣きながら見つめていた。
さきほどマナの口腔を犯した男の唇と舌が、同じ接吻を、浅く、やがて深く、少女のその部分に繰り返していた。
内腿の付け根の窪みの皮膚が薄いところを一度強く吸われ、またその部分に唇と舌が戻ってくる。いつの間にか体の奥がぬかるんでいる。聞き間違いようのない水の音がしはじめて、恥ずかしい。とても恥ずかしい――。マナの体の奥から滲みでたぬるい水が、舌と触れ合うたびに音を立てている。ざらつく舌の感触に腰の奥が震える。どうして触られていないところに刺激を感じるのだろうと思うが、頭が白く霞みはじめ、うまく物が考えられない。汚いのに、汚いとわかっているのに、どうしてそんなことをなさるのですか? 引き寄せた枕に顔を押し付けて両目を閉じる。その部分への刺激ばかりがかえって強く感じられるようになる。
「体」
と言った。
「私の体、おかしくないですか?」
消え入りそうな声でそう尋ねる。すぐに答えが返ってきた。
「おかしくない」
「ほ……ほんとに? 気をつかっているんじゃなくて?」
メロダークが唇を離して、「誰かに言われたのか?」ときいた。
「そうじゃなくて、他のところが……へ、変だから。肌……目……全部。それに……う、生まれが……生まれたのが……普通じゃない、から」
地下の水路にしがみつくように建った小さな町での、歪んだ鏡に四方を囲まれたかのような恐怖が蘇りかけた瞬間、メロダークが愛撫にほどけはじめたその場所の深いところまで指をぐいと押し込み、マナの腰が痙攣した。
「あっ……!」
悲鳴をあげ、反射的に男の頭を太腿でぎゅっと挟んだ。
「俺のことだけ考えていろ」
怒ったような声にびくりとしたが、呼吸や手の動きで、男がひどく興奮していることに気づく。
私の体で――こんな体で――この人は本当に平気なのだ、汚い場所でも唇で触れて平気だし、そうなさりたいのだ――男の激しい欲望も、それを呼び起こしたのが己の肉体であることもようやく理解できて、そのとたんずっとずっと何かを――肌や瞳や髪から抜け落ちた色素を、流れる皇帝の血を、痩せた体を、そのすべてを、汚れている、お前はまともではない、そう言って弾圧されることを――恐れ続けていた心の深い部分の扉がかちりと開き、この人は大丈夫なのだ、この体がいいのだ、そう気づき、体の中心に新しい熱が生まれた。
「マナ」
また男が名前を呼ぶ。情欲にあふれた声で。
下腹の疼きが腰へ、背中へ、体を震わせながら上へ上へと駆け上がり、熱い塊となって胸を満たし、喉を通って大きく口をこじ開ける。濡れた指がまた、あのとても痛い、敏感な突起を擦った。剥き出しになった肉の芽に、唾液に濡れた舌が柔らかく張り付き、マナの腰が跳ねた。
「やぁっ……そこ……んはぁっ、あっ……!」
自分の声の大きさにびくりとしたが、悲鳴を我慢できなかった。
左膝の裏を男の手が這う。硬い肩に持ち上げられたふくらはぎが勝手にひくついている。刺激を受けている器官に向けて全身が収縮し、それなのにシーツや男の体と触れ合う皮膚は、外界との境界線を失い、溶けていく。変な感じだ、すごく変な、内腿に当たる耳が髪が肌がくすぐったい、指がぴったりと閉じた肉の隙間をかき混ぜこじあけて奥へ進み、彼の指が私の中にありそこで動いていると思えば、指の動きにあわせ、苦痛を切り裂いて、もはや否定のしようもない快感が閃く。口内に唾液が溢れている。
平らかな白い腹の上に乗った、日に焼けた骨ばった大きな手をつかめばすぐに固く握り返される。変な感じがする、変になる、空気を求めてもがきながらおかしくなっていく。呼吸の合間に漏れる「やだ」という声は舌足らずで何かをねだるようで、自分の声ではないようだ。獣の子どもが母親に乳をねだる声だ。
「やだ……やだ、やだ……あ……メロダークさん……や……」
粘るような水の音がますます激しくなり、芯を男の唇が強く吸った瞬間、四肢を繋ぐ見えない糸をぴんと弾かれたように全身が震え、粘りつく水の音に呑み込まれ、目の前が白く霞む。