びくりとして手を引きかけたが、すぐに思い直し、そろそろとそこに触れた。二人ですることだ。二人で――。男の手の導きに従順に従い、屹立した男の形をなぞっていく。マナの手を自分の性器ごと、メロダークが握りこんだ。脈打つその感触にマナの方が震えて、「ん……」と声をあげた。
「強く」
と指示される。
「で、でも、これすごく……い……痛くないですか?」
「大丈夫だ。もっと――」
自分が触れられた時とは違う風にひどく緊張する。目を閉じ、男の胸に額を押し付けて、ふーっと息を吐きながら指を絡め、恐る恐る力をこめて、その手を動かした。今、顔を見られたら恥ずかしくて死んでしまうと思ったが、メロダークはマナの後頭部を押さえて、胸元に押し付けた。
自分の手に添えられて絡まってくるメロダークの指と、掌に包み込んだ男のその部分の、存外に柔らかな先端の感触や、脈動や熱や重みまでが、気持ちいいとさえ思った。男のこの部分を自分の中に入れるのだという知識くらいはあって、先程指一本ですらあんな痛みがあったのに、そう考えるとこめかみがまた熱くなり、でも緊張しては駄目だ、冷静になろうと自分に言い聞かせる。そっと顔をあげると、メロダークは眉をひそめ焦点の合わぬ両目を伏せ、集中しきった表情になっている。口がゆるく開いて、呼吸に合わせ、唇と舌がひくひくと動いていた。魔法を使うときに、詠唱者が見せる半瞬の忘我の表情を固めて引き伸ばしたようで、それもこれも生命の根源に触れることだからなのかしらと思い、ぞくりとした。少女の震えを感じ取ったかのように、メロダークが一瞬きつく目をつぶり、すぐにちらりとマナを見た。
「あまり見るな」
そう唸った。
「えっ?」
「見るなら体にしろ」
一瞬意味がわからなかったが、少し遅れて、男が照れていることに気づく。
メロダークさんでも恥じらうことがあるのだな、そしてそれは今なのだなと思って、なんだか感心した。
「こういうときに、照れるんですね」
と口に出していうと、メロダークが寝台についていた手の位置を変え頭を垂れてきて、少し乱暴なキスをされた。本当に恥ずかしがっておられるとちらりと思い、手の中で張り詰めて無防備にひくつく肉茎を男の体とは別の生き物のように感じ、ずっと年上の男を、かわいい、と思う。口腔をむさぼる男のために、目を閉じたまま頭を仰け反らし口を大胆に開いた。口中で唾液が重く甘く絡み、いやらしい音がして、先程よりもすべてが熱く、気持ちがいい。同じように男にも気持ちよくなってもらいたいと思い、いやこれまでも頭ではそう思っていたのだが、今は男の無防備な部分に触れていることと関係があるのか、体が自然に動いた。やがて陰茎にぎこちなく絡めていた指先を外されて、
「いいか?」
メロダークが囁き、こくりとうなずいた後、
「してください」
最初と同じことをもう一度ちゃんと口にした。
男の視線がむき出しの乳房や腹や散々に愛撫された股間までの稜線をたどっていくのを感じるが、もう隠すことをせず、火照りきった体から力を抜いた。