マナ、とメロダークが言った。
窮屈に背を丸めた男が、仰け反る白い喉に繰り返し口づけする。
「呼吸しろ」
マナには男の声だけが聞こえており、だが言葉の意味はうまく理解できなかった。すべての感覚がひしゃげ、歪み、強い痛みだけがある。
「息を」
ただ耳を打つ声の響きに、本能的に安堵し、全身を絞めつけていた苦痛の輪がほんのわずかに緩み、がちがちに強張っていた喉が開いて、まず少しの息が漏れ、あ、あ、あ、と掠れた音を立てながら外に出ていって、次に思い切り息を吸って、肺が膨らみ、腰から下を切り裂く痛みに掠れた声で絶叫した。叫ぶまい、叫ぶまいと思ったのに、まったくの無駄だった。悲鳴の途中から後頭部に手を添えられ、肩口に顔を押し付けられて、歯が当たったので顎に力をこめ、そうやって悲鳴を口の中に閉じ込め、痛みが去っていくことを望む。汗と肌の味が満ちた。己に打ち込まれた異物から逃れようともがけば、ずるりと抜けかけた陰茎が再び押し込まれ、先ほどよりも深い場所をえぐり、それを繰り返して合わさった肉と肉をこじ開けていき、もがく体を押さえつけ容赦なく腰を進めてくる男の下で、痙攣する爪先でシーツをかき混ぜ、気がつくと必死になって「メロダークさん、メロダークさん!」と男の名を呼んでいた。ひどく荒い呼吸が耳にかかる。もしかしたら、マナ、と名前を呼ばれていたのかもしれない。
内臓が筋肉が柔らかな粘膜が苦痛を訴え血を流し、ひくつく少女の肉に包まれて、膨張した男の一部が強く脈打っている。
「痛いの。すごく痛いの。メロダークさん。どうしよう、ごめんなさい、私の体やっぱりおかしいみたい。どうしよう、どうしよう? ごめんなさい、やっぱりまともじゃないの。だってすごく痛――あっ!」
もがく体を引き寄せられる。肉を支える全身の骨が苦痛に軋み、泣きながら男の背に爪を立てる。入ったぞと男の声が言う。お前の中に。全部。俺が全部。少女の苦痛とは裏腹に男の声は欲情しきっていて、聞いたこともない熱い震えを帯びており、いや、いつかどこかでこの熱狂を孕む彼の声を耳にしたと思う。あの時もたくさんの血が飛び散ったと思うが、太腿をぐいと上に押されて苦痛を上回る苦痛に思考が乱れる。擦れあう股間と内股を濡らす熱いものが、二人の汗なのか体液なのか破瓜の血なのかわからない。
泣きながら浅く息を吸い、吐き、その間に額に息がかかり唇を感じ、目を開ければすぐ側にある男の顔が激しい痛みをこらえるかのように歪んで、ただし痛みのせいではない証拠に両目が強い光を放って、瞬きもせずにマナの顔を見つめていた。