「メロダークさん」
のしかかった男の体がとても重い。呼吸が苦しい。下腹部で鋭い痛みが熱く脈打つ。だがそれらのすべては、彼女の男が彼女に与えた物であった。
「メロダークさん、気持ちいい? 私の体、嫌じゃない?」
「ああ」
間髪をいれずに男が返事をしたことに、少女は強く安心した。髪を撫でられて、荒い呼吸を整えながら言った。
「よか……よかった。これ、好きな人としたら気持ちがいいんでしょう? 男の人、そうなんでしょう?」
「ああ。とても」
とメロダークが言った。
「とても。ずっと俺は、ずっと――」
そこで止まり、いつまでも次の言葉が出てこない。だが、ぎゅっと抱きしめられて、何を言いたいかわかった気がした。男の背に腕を回し、抱き返す。息も、言葉も、すべてがつながった部分に響く。内臓に鉄の槌を振るわれているようだ。焼いた鋼を体に打ち込まれている。しかし耳の上にかかる男の呼吸に、気持ちが段々と落ち着いてくる。胸元に伝わってくるメロダークの心臓の鼓動に意識を集中した。ぴったりと抱き合っていた。内側には苦痛を、外側の汗に濡れた肌には男の体毛や皮膚を感じ、その感触を覚えた。メロダークはゆっくりと息をしている。顔が見えないのに、重なった頬の部分で穏やかな顔をしておられる、そういう風に思い、きっと間違っていないはずだった。
「俺はマナと」
突然、メロダークがひどくはっきりとした口調で言った。
「こういう風になれてよかったと思っている」
マナではなくその場にいない誰かに対して宣言するような、はっきりとした、いつもとは違う声であった。
どこかできいたことのある声と口調で、あ、そうだ、あの少年の声だと思い出す。
振り仰ぎ男の顔を見ようとするが、メロダークがその前に上体を起こし、軽く腰を浮かせた。
少女の腰の下に片手を差しこみ、唐突にそれを持ち上げ、引き寄せて、肉襞を擦りながらずるりと半ば抜けた陰茎をまた押し込み、最初の挿入よりは幾分滑らかに、しかし少女の苦痛には変わりがなかった。マナの上体は腰の動きについていけず、うめき声をあげ背を仰け反らせ、音を立てて髪が寝台の上に流れ落ちた。とっさに太腿で男の腰を挟みこみ体を支えようとする。筋肉と骨の軋みがすべて体の中に伝わった。メロダークが掠れた息を吐いた。
「んあっ、あっ、はぁっ……」
声をあげ、腹に力をこめて体を起こそうとするがそれもままならず、もがきながら身を捩り肩と肘で体を支えようとして失敗して肩を落とし、悲鳴と一緒に寝台を軋ませる。
「少し動くぞ」
とメロダークが言った。
「……う……あ……動いた後に言わないでください」
呼吸の合間に抗議すると、メロダークが浮いた背をするりと腰まで撫でおろした。
「すまん。もっと動く」
思わず短い嗚咽を漏らしたマナの頬に触れた。
「痛くさせているな」
どこか悲しげな声に、痛くないです、とっさにそう言いかけて、やめた。
「すごく。でもいいんです」
両手を上に伸ばして、寝台の上の端をつかんだ。そうやって、来るべき苦痛に暴れぬよう自分の体を自分で固定して、男を見上げる。