叫びすぎて枯れた喉を呼吸のために開き、苦痛の限度を越して脱力した体の全部を男に委ねていた。
寝台をつかんでいた手は、今はぐしゃぐしゃに汚れたシーツの上に投げ出されている。
子供の頃からずっと、痛みを感じた時には心の中で女神に祈るのが常だったが、初めて女神の名を呼ばなかった。耐え難くなった時には目を開けて、涙にぼやけた薄闇に浮かぶ男の顔を見つめた。
からみ合う太腿の間で、ぐちゅりと音がした。
律動にあわせて揺れる体の下で寝台が軋んでいる。体の奥が痛い。熱い。痛い。呼吸と一緒に声が漏れ、突き上げに合わせて全部が揺れている。抽送のたびに少しずつ体が開き、激しい痛みとともに少しずつ深いところへ沈みこんでいく。粘りつく液体が音を立てた。熱い。熱い。内側も溶けあっていく。乳房を撫でられると体の芯が震え、腰の奥にその震えが下りていった。
溢れでて滴る蜜がひどく淫靡な音を立てていた。男の体臭や汗の匂いを圧倒し、生臭い、いやらしい匂いがマナの鼻先をくすぐった。
「ああ……あ……んーっ……あっ……」
耳を打つ自分の声はねっとりと甘い響きを帯びている。呼吸のために大きく開けた口から、抑えようのないあえぎ声が漏れ続けている。もう何も考えられなかった。
固く閉じた瞼の裏に、白くぼんやりとした何かが浮かんだ――水の音がする――蓮の花だ。暗闇の中で八枚の花弁がくるり、くるりと回りながらほどけていく――熱い――最後にくるりと回転し、パチリと、そう、ちょうど蓮の花が開くときと同じかすかな音を立て、暗闇ではっきりと像を結んだそれは、花でなく真っ白な女の顔であった。
永遠の黄昏の中で、彼女が伏せた目をあげた。
「メロダークさん!」
弾かれたように両目を見開き、男の名前を絶叫した。
夢中で首筋にしがみつき、両足を彼の腰に絡めた。全身が総毛立っている。男を包んだ熱い肉壁が強く震えた。いつの間にか月は雲に隠れており、部屋の中は闇に閉ざされていた。
メロダークさん、掠れた声で男の名を叫ぶ。隠された魂を探すように、溺れる者が必死に手を伸ばすように、繰り返し、繰り返し。
「メロダークさん。メロダークさん! 一人にしないで――置いていかないで!」
伸ばした手をメロダークが握りしめた。
「マナ――もう――」
メロダークがあえぎ、寝台のきしみと粘りつく水音と肉の打ち合う音が狭い部屋を満たし、最後に勢いよく深く強く突き上げられ、密着した部分で男がぶるりと震えるのを感じた瞬間、マナの体の中でも、苦痛と快感が分水嶺を越えてどっと混じりあった。訪れた波は少女の心と体をさらい高くへと押しあげ、柔らかな体を硬直させ、しなった背中が弓なりに仰け反ると、男の体の下で痙攣した。真っ白く霞んだ意識が天地も分からぬ空白の中でぷつりと途切れ、全身の力が抜けて、恋人の腕の中、少女は小さな死を迎える。