12月20日
不動に思えていた毎日が、一刻でがらりと変わってしまった。
帰り道、神殿に立ち寄ったメロダークはアダと二人で何事かを話しあったあと、日暮れ前には荷物をまとめてひばり亭から引っ越してきた。マナが恥ずかしがったり、ぼうっとしたり、興奮したり、アダにしなくてもいい言い訳をする暇はなかった。メロダークは巫女長の指示に従っててきぱきと雑務をこなし、夕暮れの鐘をついた後は、もう十年も前からそうしていたかのような自然さで、マナやエンダと夕食の席を囲んだ。
翌朝、マナが井戸で水を汲んでいると、やってきたメロダークが当然のようにそれを手伝いはじめた。
大小いくつもの水瓶に次々と水が満たされていく。これまでにマナがやっていたのよりずっと早い時間で作業を終えたメロダークは、井戸の蓋を閉め、「夕べは大丈夫だったか」と聞いた。
冬の早朝の弱々しい光に照らされて、寝起きのマナの顔はいつもよりずっと青白く見えたのであった。
「あまり眠れませんでした」
「また何かあったか」
「何かって。昨日は、メロダークさんが来られたじゃないですか」
「……いびきか」
「そうではなくて。同じ屋根の下におられると思うと……眠れなくて」
マナの吐く息はたちまち白く染まった。
夜の間に雪が降ったようだ。水瓶の縁にうっすらと積もった雪を手で払ったマナは、「こんなに水を入れたら、運ぶのが大変ではないですか?」と心配そうに言った。メロダークは軽々とそれを持ち上げ、肩に担ぎあげた。
役に立っている。そう思うと、俄然元気が出た。彼を見あげるマナの目には感動と感謝の光が揺れており、ますます元気が出る。これだ、と思う。こういうのを求めていたのだ。
サクサクと音がした。雪を踏みつつ宿舎からやって来たエンダは、この寒いのに素足だった。もつれた前髪をかきあげて大口を開けてあくびをしていたが、メロダークを見つけるとびっくりしたようだった。
「なんだお前。今日もいるのか」
と言った。
「……住み込みだからな。ずっといる」
「ふーん。よかったな」
ぼりぼりと胸元を引っ掻いたエンダは、井戸端に並んでいた水瓶に手をかけ、それがまるで羽毛の塊であるかのように、ひょいひょいと両脇に抱えた。マナがメロダークの側を離れた。
「エンダ、二つ持つのは危ないから駄目だよ」
「むぅ。三つじゃないから平気だ」
「そりゃそうだけど」
エンダの後を追おうとしたマナが、足を止め、思い出したように振り返った。
「メロダークさん、それは本殿の手洗い場にお願いしますね。置き場所は礼拝堂でアダ様に伺ってください」
てきぱきとした声で言うと、小走りにエンダを追った。追いついたあとは仲良く肩を並べて、宿舎の裏口へと去っていく。
「毎朝ありがとうね、エンダ」
「おおー。いいぞ。エンダは力持ちだからな」
そういった会話の断片が聞こえた。
肩に乗せた水瓶が急に重くなったような気がして、メロダークは両手でそれを抱えなおした。